
こんにちは、「畑とジャムと。」の内田朱美恵(うちだ すみえ)です。
「ジャムとわたしの、ささやかな物語」第2話をお届けします。
🟠 “おいしい”って、なんだろう?
私にとって「おいしい」は、
単に“味”のことではなくて、
思い出や誰かとの時間、心がほぐれる瞬間のことなんだと思います。
🟢 ある朝の記憶
ある日の朝。
彼が作ってくれたのは、シンプルなトマトソースの卵料理でした。
炒めた玉ねぎに、完熟の真っ赤なトマトを加えてソースに。
そこに卵をそっと落とし、火を止めるタイミングでとろっと仕上げる。
かりっと焼いたバゲットにそのソースをたっぷりとつけて、
季節のフルーツと一緒に食べる——。
私はその朝、「丁寧に食べる時間」がもたらす満足感に、はじめてちゃんと気づいた気がしたんです。
🟢 ジャム作りの時間がくれる“無心”
ジャムを作る工程で、私が一番好きなのは
フルーツの香りが立ち始めるその瞬間。
「今日のブルーベリー、いい香りしてる」
「これはきっと、おいしいジャムになる」
そんなふうに思える香りが出てくるまで、じっと待つ。
他にも——
・洗って拭いて、ひとつずつ丁寧に切る時間
・砂糖をまぶして、果物がじんわり水分を出すのを待つ時間
・“この組み合わせ、どんな味になるかな”と考える時間
煮詰めるのはほんの数分だけど、
そこに至るまでの静かで幸せな時間が、何よりも好きなんです。
🟢 ふたりで囲む、朝の食卓
私たちの家は、朝日がたっぷり差し込む窓の多い家。
庭では鳥たちが遊んでいて、自然の音でゆっくり目覚めます。
目覚ましは使わず、自分たちのペースで1日をスタート。
その日の気分に合わせて、
果物、あたたかいお茶、残っていたトマトソース、ジャム。
「今日なにする?」「午後、草取りしようか」
なんて、取りとめもない会話をしながら過ごす朝の時間が、
今の私にはかけがえのない宝物です。
🟢 “おいしい”には、物語がある
実は私が初めて感動したジャムの味は、彼が作ってきてくれた「いちごジャム」でした。
市販の甘いだけの味じゃなく、
いちご本来の甘酸っぱさがぎゅっと詰まった一瓶。
「これ、売れるよ!」
と興奮して言った私に、彼が教えてくれたのは、
「いちごを砂糖にしっかりなじませて、水分を出すことがコツ」だということ。
それを参考にして、私はジャム作りを始めたのです。
🟢 季節がめぐる、私たちの台所
季節ごとに彼が持ってきてくれる野菜で、私はたくさん料理を作ります。
春は山菜の天ぷら
夏はきゅうりの漬物、ナスのマリネ、トマトソース
冬は大根や人参の煮込み料理
シンプルな味つけだけど、
「おいしい」と笑ってくれる人がいるだけで、料理はもっと楽しくなる。
🟣 “おいしい”は、暮らしの中にある
ジャムも、朝食も、ふたりで囲む小さな食卓も。
どれも、日々の暮らしの中から生まれた“ささやかな物語”です。
わざわざじゃなくて、
少しの工夫と想いがあれば、
“おいしい”は、毎日の中にちゃんとある。
そんなことを、これからも綴っていけたらと思っています。
次回は、「保存する、というやさしさ」というテーマで、
私の“ジャム作り哲学”をお届けしたいと思います。
また読んでいただけたら嬉しいです☺️
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